不動産賃貸業の税務調査について(法人編)
不動産賃貸業を営む法人に対する調査は、その日程や売上・経費に対する確認事項は前回の個人編とほぼ同様です。
今回は法人特有の調査項目を確認していきましょう。
調査項目(売上)
賃貸物件所有者から法人が賃貸物件を一括借り上げ(サブリース)している場合や、賃貸物件の管理業務を行って管理手数料を得ている場合には、法人が受け取っている手数料が、その規模や業務の内容に照らして適正かどうかを確認することになります。手数料が多いほど所得の分散効果等により節税効果が高くなるためです。
通常、一括借り上げの場合賃貸収入の15%前後、管理手数料の場合5%前後が相場といわれますが、一概に何%なら適正ということはありません。一括借り上げの場合なら法人が空室リスクを取り、賃借人との契約主体となりクレームの窓口となっているか、集金を行い(振込の場合、法人口座に振り込み)維持修繕対応をしているかなど、手数料に応じた実態が伴っていることが必要です。
調査項目(経費)
役員報酬が、従事している業務内容・量にみあっているかを確認します。
その他の経費については<個人編>を参照ください。
指摘事項が税金に与える効果について
調査において指摘された内容が税金に与える影響はおおまかに次のようになります。
1.<期ずれ>
例‥翌期の経費を今期計上していたものなど
この場合、計上時期がずれていただけで翌期には経費にできるため翌期の税額が下がります。
2.<指摘年度限り>
例‥他の勘定科目で処理していた支出を交際費や役員への個人的なものとして役員賞与とされた、など
この場合、指摘年度のみで翌期以降には影響しません。しかし、「役員賞与」の指摘は最も避けなくてはならないことです。なぜなら、法人の経費に認められず法人税が増加し、役員個人には所得住民税負担が生じるため「往復びんた」と呼ばれます。
3.<翌期以降に影響>
例‥過大役員給与や、前期の管理手数料の否認
この場合、指摘年度以降も業務内容の見直しなどをしなければ複数年に渡り影響がでます。
調査で指摘されたからといって即否認になるわけではありません。調査上の着眼点を知り、説明できる資料や実態を積み重ねておくことが重要になります。
税務調査ポイント
実態が伴ったサブリースや管理手数料の設定
・経費
適正な役員報酬の設定
文 税理士・CFP(R) 西木敏明