「不動産所得」について
「経費」における注意点
① 損害保険料
数年分の保険料を一括支払いするケースでは、申告する年に対応する保険料だけが経費となります。
翌年以降に対応する保険料部分は「前払保険料」として資産計上され翌年以降に対応部分を順次経費化していきます。
② 修繕費
原状回復や維持管理のための支出、例えば剥がれた外壁の塗装や、壊れた屋根の張替などは金額の多寡に関わらず修繕費となります。
一方、固定資産の使用可能期間を延長させるため、または固定資産の価値を増加させるための支出は「資本的支出」になり、修繕費とは認められません
避難階段の取り付け(物理的な付加)・畳張りの和室からフローリングの洋間への改装(用途変更)などが資本的支出となります。
賃貸物件の改修を行った場合には、外壁塗装・壁紙張替・空調取替など内容ごとの金額を請求書や見積書から把握し、それぞれの工事内容ごとに修繕費になるのか資本的支出になるのかを図2の基準に照らし合わせて判断していきます。
「修繕費」は金額の多寡は関係ありませんが、金額が大きい場合には税務調査で説明を求められることもありますので、見積書・請求書のほかに施工前後の写真等を補完資料として揃えておくとよいでしょう。
③ 減価償却費
中古物件を購入した場合は、法定耐用年数ではなく、簡便法等を利用することによって、より短い耐用年数を適用し早期に経費化することができます。
簡便法による中古物件の耐用年数の計算式は以下のようになります。
(計算結果が2年未満の場合は2年となります)
㋑ 法定耐用年数を全部経過したもの
法定耐用年数×20%=残存耐用年数
㋺ 法定耐用年数を一部経過したもの(図3参照)
法定耐用年数―経過年数+(経過年数×20%)=残存耐用年数
ただし、この簡便法の適用は事業の用に供した年のみですので申告時に忘れないようにしましょう。
また、法人(任意償却)と違い個人は強制償却のため必ず計上しなければいけません。
④ 借入金利子
賃貸物件取得のための借入金利息は必要経費となります。
ただし、新たに不動産事業を開始するために借入れて賃貸物件を取得した場合、賃貸物件使用前に支払った利息は賃貸物件の取得価格となります。
次に「不動産所得」が赤字となった場合の注意点です。
「不動産所得」の赤字は、他の所得と損益通算できるために節税になりますが、土地取得の借入金利子に相当する部分は損益通算の対象となりません(図4参照)。
また、利子ではありませんが借入にともなって支払う信用保証料も経費になります。
ただし、一括払いの損害保険料と同様に保証期間に対応して経費化していきます。