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相続・贈与時の不動産の評価(財産評価基本通達と不動産鑑定評価)について

 相続・贈与の対象となる不動産の評価についてですが、原則は「時価」です。
 しかし、「時価」といっても買ったばかりの分譲住宅でもない限りはっきりしないケースがほとんどです。
 そのために「財産評価基本通達」があり、この評価通達は合理的な評価方法であるとされています。
 しかし、例えば土地の「路線価方式」や「倍率方式」といった評価方法はまったくとは言いませんが土地の個性を勘案しない画一的な評価方法といえますので、特別の事情・・・・・のある土地の場合には「財産評価基本通達」による評価額(以下「通達評価額」という)が「時価」を大きく上回ってしまう場合があります。
 このような場合に「通達評価額」を引き下げるために利用されるのが、不動産鑑定士による「不動産鑑定評価」(以下「鑑定評価額」という」)です。
 この二つの評価方法を巡って争われた税務訴訟を見てみましょう。(内容は簡略化しています)

「鑑定評価額」による評価を認めなかった判例の主旨

 納税者側が「鑑定評価額」を主張し、課税庁が「通達評価額」を主張し争うケースは非常に多く、ほとんどの場合納税者側の敗訴となっています。
 これらの判決では、「鑑定評価額」の算定根拠の不備を指摘し「鑑定評価額」は「時価」であるとはいえないと結論付けています。

 例えば、近隣取引事例から不動産の時価を算定する場合において、選択した近隣事例に偏りがある場合や、補正・時点修正する場合の減額割合の合理的な説明不足などです。
 これらの判決の根底には「鑑定評価額」が「通達評価額」を下回るだけでは納税者側の主張を認めず、前段で説明した通り「通達評価額」が「時価」を上回るような特別の事情・・・・・がある場合に限り「鑑定評価額」を認めるというスタンスがあります。
 「鑑定評価額」を認めた例としては、「通達評価額」では評価しきれない無道路地(囲繞地)に対し「鑑定評価額」を認めたケースや、「通達評価額」>「時価」>「鑑定評価額」と考えられるケースで、裁判所が独自に「鑑定評価額」を取り直して採用したケースなどがあります。
 つまり、「通達評価額」が「時価」を上回っている場合には、「鑑定評価額」による申告は有効であり、裁判まで至らないケースを含めると相当数利用されているものと思われます。
 ただし、鑑定にあたっては相当の費用がかかるので費用対効果を考える必要があります。

では、次に「評価通達額」による評価を認めなかった判例について見ていきましょう。

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