HOME › コラム › 運用関連コラム › 初めての確定拠出年金・商品の選び方(3)

初めての確定拠出年金・商品の選び方(3)

若い人ほど投資信託の割合を増やした方がいい理由

資産運用の基本姿勢を考えたとき、
どの商品で運用するかは投資家個人の決定によるものであり、
もし投資信託を選ばれるとしたら、相場や経済の動きに無頓着ではいられません。

しかし、確定拠出年金の中であれば、投資信託を選択されたとしても
生活や仕事に支障がでない程度のゆったりとした運用をすることも可能なのです。

理論的にも、また平成29年3月現在の各種相場の状況的にも、
若い人ほど投資信託での運用割合を多くもつことがおすすめ。

その理由を、以下に3つご紹介します。

長期運用は意外と手間がかからない

投資信託の運用では、いつ買うのか・いつ売るのか、
ドキドキしながら生活するせわしないイメージをお持ちの方もおられると思いますが、
長期運用となる確定拠出年金での実態はそこまでストレスがありません。

まず購入時ですが、
確定拠出年金では毎月少額の購入しかできませんし、普通に月額掛金で買っていくだけでドルコスト平均法で運用することになり、時間的なリスク分散効果が得られます。

つまり、購入に関しては
ひとつの商品を長く定額で買い続けることが確定拠出年金の基本スタイルであり、
毎月のように購入する商品を変更することが必須のアクションではないのです。
一度商品を決めたら、しばらくはそのまま自動運転で購入していってOKです。

では売り時は、というと、
月額掛金でコツコツ買っていった商品が
高値圏にきたら一気に売却して利益確定することが基本スタイル。
こうした山場は景気循環の中では10年程度の中期的な循環でやってきます。
つまり、売り時を慎重に見極めるのは10年に1度程度、ということ。

若い世代の方であれば、確定拠出年金の運用リミットである60歳迄に
この高値圏を3〜4回経験できる可能性があると考えることができるのです。

のんびりしすぎて、ちょっと期待ハズレ、、と思われる方もいるかもしれませんが、
確定拠出年金での長期運用とはこのぐらいのゆったり運用となるのです。

指標や相場を確認する習慣が身に付く

確定拠出年金の投資信託運用に限らず、
株式や債券、外貨に影響して値動きする商品での運用では、
「いくらで買っていくらで売る」という思惑を持って運用することが必要です。
これを運用する上での「シナリオ」と呼んでいます。

確定拠出年金で主軸となるインデックス投資信託の運用では、
目標とする利益率を持っておくことをおすすめしています。
商品毎の利益率の詳細は、こちらのコラムを参照ください。

たとえば、日経225やTOPIXに連動するインデックスでは、
35%程度の利益率が達成できるのであれば売却を検討してもよい水準としておすすめしています。
インデックスは日経225やTOPIXを完全再現するよう運用されているものですから、
個別投資信託の基準価額を確認するまでもなく、日々の日経平均株価を確認すればOKです。

スマホをお使いの方であれば、日経平均株価が確認できるアプリを入れ、
お昼休みや休憩中にちらりと確認する習慣をつければ充分。
若い方であればすぐに操作にもなれ、ストレスなく相場の確認を生活の一部とすることができるでしょう。
こうしたアプリには、NYダウの値動きやドル・ユーロの為替相場のコンテンツを入れておくこともできます。

商品を買っておらず自分にまったく関係がなければ、
そうした数値を見るきっかけもないでしょうし、
見続けるモチベーションも維持できないでしょう。
しかし、値上がったら売らなきゃ! と思ってのスマホのタップであれば、
楽しんで取り組んでいただけるのではないでしょうか。

商品を実際に保有するメリットのひとつには、
日本や世界の経済の動きを身近なものとして意識できることがあげられます。

高い運用益を期待することができる

資産運用という大命題の上では、
投資信託を選ぶことによって「高い運用益を期待できる」ということが最大の魅力なのですが、
ここは慎重にお伝えすべきところと思い、丁寧に言葉を選んでいきたいと思っています。

過去の実績を見ると、様々な政治的・経済的事件により
株価や為替の相場は、10〜15年程度で山と谷を繰り返してきました。

相場の谷である底値圏を含めたところで購入し、相場の山である高値圏で売却すれば利益が得られる。

このシンプルな構造にくわえ、過去のデータから高値圏のイメージを持ち、
得られるであろう適正な利益率を目標におき、
その場面がきたら、あっさりと商品を売却する姿勢が重要です。

売却を決めるのは、加入者であるあなたです。

購入時のストレスからはほぼ解放されている確定拠出年金でも
売却のタイミングにだけは思慮深くかつ大胆な決断が求められます。

いざ売ろうとすると、様々な思惑がわいてきて悩んでしまうことも多いのです。

ここで筆者も含めた多くの個人投資家が陥りやすい、ダメな思考例をあげておきます。
脳裏にこうした思考がもくもくと現れたら、強い意志で自制し、迷いを振り払いましょう!


ダメな思考例その1 もっと上がるんじゃないかしら!

短期間で当初予定の利益率の水準まで値上がると、
ここで売るのはもったいないんじゃない? もっと上がるんじゃないの?
という思考がわき上がることがあります。

そうかもしれません。そういうこともあるかもしれませんが、
さらに値上がっていくなら、一旦売却したあとでも月額掛金で購入し続け、また売ればいいだけなのです。
若い世代の方には時間が充分にあり、
時間があるということは次の好機のために仕込みをすることも必要ということ。
「もっと上がるかもしれない」という可能性は、今の売却を先伸ばしにする絶対の要因にはなりません。

どんな少額であれ、利確(利益確定)して財産を無くした人はいません。
逆に利確(利益確定)しなければ、それは利益ではないのです。

どうしても手放すのが辛ければ、せめて半分、あるいは元本程度は
当初目標の利益率にきたら売却を検討しましょう。


ダメな思考例その2 どこまでも下がっていくんじゃないかしら・・・

相場がどんどん下がっていく局面のとき。
運用経験が豊富で、相場の大きな山・谷を数回経験した方なら
絶好のお買物相場到来! とわくわく購入を続ける場面です。

ところが、初心者が初めての大きな相場の下落に直面すると、不安ばかりが大きくなることがあります。
どこまでも下がっていくのではないだろうか、
明日はもっと下がるのではないだろうか、だったらここで売っておいたほうがいいのではないだろうか・・!

そうして売って損を確定してしまうことを、「狼狽売り」といいます。

確定拠出年金は、原則として60歳まで長く続ける運用です。今すぐのお金の算段ではありません。
若い世代の方であれば、また値が上がってくるのを待つ時間的な余裕があり、
直ちに決着をつけねばならない切迫した場面ではないケースのほうが多いでしょう。
そして、また来月もその次の月も掛金は拠出され、原則として資産は増えていくのですから、
あまり悲観的に考えすぎない自制心も大切です。

焦って短慮な行動をしないことも、確定拠出年金の運用では大事なポイントです。

結局、おすすめの商品はどれ?

さて、ここでこのコラムの結論として、おすすめの商品をご紹介します。

ただし、このおすすめには条件があります。
以下の条件をすべて満たした状況下で、すべての条件に合致する人へのおすすめですから、
すべての加入者へのおすすめではないことを充分にご理解の上、ご覧ください。


1) 満期の長短に関わらず定期預金が0.01%の状況下で、
2) 現在45歳未満の人。若ければ若いほどおすすめ。
3) 投資信託は売却して初めて利益が確定できるものだとよく理解し
4) そのためには、日常的な相場の確認が苦にならず、
5) できるだけシナリオを変えずに適切に売却する重要性が理解できた!という方には・・・!



国内株式投信のアクティブ、
海外株式投信のインデックス・アクティブ がおすすめです。

値動きが大きく、35%以上の利益率を目標とすることができ、
売却のタイミングを見極めやすい運用をしていただけるでしょう。


国内債券や海外債券の投資信託ではない理由は、値動きの小ささです。
国内債券投信の利益率目標の適正値は5〜6%、海外債券であれば20〜25%。
あまり値動きがない商品は、初心者にはかえって売り時を決めづらいものとなると思われます。



文 FP 西木雅子

確定拠出年金加入者向け継続教育のご案内はこちら


このページの先頭へ